虹彩認証とは

虹彩認証とは人間の瞳にある「虹彩」を用いて本人認証を行う
「生体認証(バイオメトリクス)」技術のひとつです

虹彩とは

まずはじめに、「虹彩」とは人間の瞳にある「ドーナツ状の模様」のことです。通常「人間の目の色」の話をする時は、この「虹彩模様の色」を指しています。
虹彩は、瞳孔の開き具合を調整するための筋肉で構成されており、外部から眼球内部に入る「光の量」を調整する機能を有します。

「虹彩模様」は、指紋と同じように人それぞれ異なります。身体の一部であるにも関わらず遺伝的な影響がほとんどなく、同一人物の左右でも、一卵性双生児であっても異なります。また、顔や指紋と違って生後2年経過後、つまり満2歳以降は一生「経年変化しない」ことも大きな特徴と言えます。

これらの特性を活用し、「虹彩」を用いて本人認証を行う生体認証技術「虹彩認証」が誕生しました。

虹彩01
虹彩02
虹彩03

生体認証(バイオメトリクス)について

「虹彩認証」は、指紋認証や顔認証と同じ「生体認証(バイオメトリクス)」の一つです。

「生体認証」は、身体の一部を用いて本人認証を行う技術で、鍵やICカードに代表される「所有物認証」や、IDやパスワード・暗証番号などを入力する「知的認証」と異なり、持ち歩きや記憶が不要です。
「生体認証」は暮らしを便利にするだけではなく、紛失や盗難、偽造といったリスクの軽減にも繋がるため、安心・安全で強固なセキュリティシステムでもあります。

それでは次は、代表的な「生体認証技術」をご紹介しましょう。

生体認証(バイオメトリクス)の種類

現在、実用化され普及している比較的身近な「生体認証技術」は、以下の4つです。

  • 指紋認証指紋認証
  • 静脈認証静脈認証
  • 顔認証顔認証
  • 虹彩認証虹彩認証

それぞれの性質を簡単に説明していきます。

・指紋認証とは

指紋認証は、人間の「指紋」を用いて本人認証を行う技術です。
iPhoneやサムスンGALAXYなどのスマートフォン(スマホ)に搭載されており、私たちのもっとも身近な生体認証技術といえるでしょう。

・静脈認証とは

静脈認証は、「手のひら」や「指」の静脈パターンを用いて本人認証を行う技術です。
静脈パターンは、通常私たちの目には見えないため偽造されづらく、怪我や経年変化などの影響も受けづらいことが特徴です。

・顔認証とは

顔認証は、骨格や目と目の間隔などの「顔の特徴」を用いて本人認証を行う技術です。最近では、「iPhone X」に顔認証が搭載され話題を集めました。
顔認証はカメラで顔を撮影するだけなので、センサー等との接触を必要とせず、自然なUXで本人認証を行うことが可能です。

・虹彩認証とは

虹彩認証は、人間の「虹彩」を用いて本人認証を行う技術です。
一部のスマートフォン(スマホ)に搭載されているものの、日本国内ではまだほとんど普及していない次世代の本人認証技術で、他の生体認証と比較して高精度であること、顔認証よりも抵抗が少ないといったメリットから、実用化ニーズの高い先端技術の一つです。

虹彩認証と他の生体認証(バイオメトリクス)との比較

「虹彩認証技術」は、セキュリティの高さを表す指標である「FAR(他人受入率)」が最も低い、つまり「最もセキュアな生体認証技術」であると言われています。

先述した生体認証技術の中では、「虹彩認証」と「静脈認証」は経年変化しない強みがあり、「虹彩認証」と「顔認証」はタッチレス(非接触)という利点があります。
また、価格や導入コストを重視するケースでは「指紋認証」が採用されることが多いです。

「虹彩認証」は、長期に渡る利用を想定しているケースや、タッチレスの利点を活かせる利用シーンにおいて、導入を検討すべき「生体認証技術」と言えるでしょう。

生体認証の比較

認証種別 接触タイプ 特徴量 精度 経年変化 導入コスト
FRR
(本人拒否率)
FAR
(他人受入率)
指紋認証 タッチ型 マニューシャ 〜0.1% 〜0.1%
静脈認証 タッチ型 静脈の血管
パターン
0.01% 100万分の1
顔認証 タッチレス型 顔の輪郭や
パーツの配置等
0.1%〜 0.01%〜
虹彩認証 タッチレス型 目の虹彩模様 0.1% 120万分の1

虹彩認証システムの仕組み

現在、世界で商用化されている「虹彩認証システム」のほとんどは、1992年にアメリカ/ケンブリッジ大学のドーグマン教授が提案した「ドーグマンアルゴリズム」を使用しています。
仕組みを簡潔に説明すると、カメラで撮影した「虹彩画像」から、個人固有の「虹彩コード」を生成し、データベースに保存してある「虹彩コード」とマッチングして、本人であるか or 他人であるかの認証を行っているのです。
当社の「虹彩認証システム」は、ドーグマンアルゴリズムをベースに「独自のアルゴリズム」を派生させ、「認証精度向上」の実現を目指しています。

虹彩認証の精度と考え方

「虹彩認証」における精度は、主に「FAR(他人受入率)」を指標とし、「FRR(本人拒否率)」との相違度(ハミング距離)を調整してチューニングします。

・FAR(他人受入率)とは

セキュリティの高さを表す指標である「FAR(他人受入率)」は、登録されていない他人を、登録されている人の虹彩であると誤認して受け入れてしまう確率のことです。
「FAR(他人受入率)」は、認証業界では低いほど望ましいとされています。

・FRR(本人拒否率)とは

「FRR(本人拒否率)」は、登録されている本人が認証を行なっても、本人ではないと誤認して拒否してしまう確率のことです。
「FRR(本人拒否率)」も、「FAR(他人受入率)」と同じく、認証業界では低いほど望ましいとされています。

認証プロセスの中で「虹彩コード同士」を照会する際に、「相違度(ハミング距離)」を算出します。
その「相違度(ハミング距離)」において一定の「閾値」を置くことで、「認証 or 否認」を判定する仕組みとなっています。
「虹彩認証システム」においては、相違度(ハミング距離)をどこに置くかによって、「認証精度」を調整していきます。「FAR(他人受入率)」を厳しくするには「相違度(ハミング距離)」を下げることになりますが、その分「FRR(本人拒否率)」が上がってしまい、逆もまたしかりです。

FAR(他人受入率)とFRR(本人拒否率)の関係

◎ 認証

FAR(他人受入率)Down
FRR(本人拒否率)Up

× 否認

FAR(他人受入率)Up
FRR(本人拒否率)Down

  • 相違度0%
  • 相違度20%
  • 相違度100%

「虹彩認証システム」を導入される際は、ご利用シーンに合わせて「適切な認証精度」にチューニングすることがとても重要となってきます。

世界各国の社会課題を解決している「虹彩認証ソリューション」

日本国内においては、まだ一部製品に搭載されているのみでほとんど普及していない「虹彩認証」ですが、海外ではどうでしょうか。

まず、お隣りの「中国」では、春節(旧正月)の「世界最大規模の民族大移動」による空港、道路、鉄道の大混雑が度々問題視されていました。この問題を解決すべく、2018年から鉄道を始めとする交通インフラに「虹彩認証」を導入することで、そのスピーディーさと効率の良さが状況の劇的改善に寄与したと言われています。
元より、「WeChat Pay(微信支付)」や「アリペイ(支付宝)」などのモバイル電子決済利用率が「98.3%」とも言われるほど電子決済インフラが確立しており、銀行ATMも「虹彩認証」で利用することができるなど、現金やカードを必要としない「キャッシュ/カードレス社会」を推奨し、実現している中国ですから、人口問題による交通インフラの混乱の解決策に「生体認証/虹彩認証」を採用するのは、政府にとっても国民にとってもごく自然な流れだったのではないでしょうか。

また中国に次ぐ人口数の「インド」では、「Aadhaar(アドハーまたはアーダール)」という日本でいう「マイナンバー」のような制度があり、13億人もの人が指紋や虹彩認証による「生体認証ID」を取得しています。
それによって単なる本人認証だけでなく、現金を持ち歩かないで決済できることにより犯罪を防止したり、出生届を持たないような福祉受給の有資格者にも漏れなく給付を行ったり、さらには不正受給をも防止したりと、自国の問題を解決する独自の生体認証基盤の構築に成功しています。

その他にも、「シンガポール」ではIC旅券(パスポート)に虹彩画像を登録して出入国管理に利用したり、ドバイを擁するUAE(アラブ首長国連邦)では、2001年からすべての国境審査/入国審査に「虹彩認証システム」を導入し、中東でありながらも治安が良くテロのない国を実現しています。

このように、世界に目を向けてみると「虹彩認証」は各国が抱える様々な問題を解決するソリューションとして大いに活用されていることがわかります。

虹彩認証が日本国内で導入されていない3つの理由

世界と比較して遅れをとっている「日本の虹彩認証」ですが、なぜ国内においては普及が進んでいないのでしょうか。

  1. 日本国内において「虹彩認証」導入の前例がない おそらくこれは1番の要因で、外国産の一部ハードウェア製品を除いて「虹彩認証」の導入前例がないことが考えられます。
    「虹彩認証技術」の研究開発は、虹彩を撮影する「専用カメラモジュール」の開発、「虹彩認証エンジン」の研究、「制御アプリ」の開発など、開発項目は多岐にわたり独自に製品化しようとすると高いコストがかかってしまいます。
    その反面、実際にどこで活用されどれくらいの売り上げになるかの予測は未知数であるため、日本で過去に研究されていた「虹彩認証」は、ゴールにたどり着く前に消え去ってしまったのです。
  2. 日本で「虹彩認証技術」を研究開発している企業がない 現状では、「虹彩認証」の導入を検討すると必然的に海外企業と取引きしなくてはなりません。言語の問題だけでなく、品質の問題やフォローを受けられなかったり、知的財産面の課題もあり、紛争になってしまった場合は時間もお金もかかりとても大変です。
    情報収集の段階でさえ情報不足が課題となってしまい、国内導入の前例も、研究開発している企業もない日本国内では、正確な情報を得ることは難しく、正しい意思決定はできないと思います。
    日本
  3. 高価格な「虹彩認証カメラモジュール」 日本国内では虹彩認証を実用化している企業はないため、虹彩認証の導入を検討すると外国製品に頼らざるをえません。
    しかし、他国で商用化されている「虹彩認証カメラモジュール」は高価格なものが多く、それらを利用して製品を製造/販売しようとすると、当然のように小売価格も高価格になってしまい、販売計画は難しくなります。 また、SDK単体を入手したくてもカメラモジュールとセット販売になっていることがほとんどです。
    これでは費用面の負担が大きく、開発に着手する前の段階で他の認証技術を検討することになってしまいます。

当社の「虹彩認証SDK」は、リリースしたばかりでまだ導入事例こそないものの、日本で初めて「虹彩認証SDKの実用化開発」に成功しました。また、「SDKをライセンス提供」することで、これまで導入の壁となっていた企業さまにかかる「開発コストの軽減」を実現します。

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